容量あたり単価最強級のクラウドストレージULTRA DRIVEをレビュー

著者はプロバイダが発行してくれるメールアカウントを二つ持っています。別に狙って2つ作った訳ではなく、自宅にサーバを設置する際に固定IPアドレスをもらうにはプロバイダを乗り換える必要があったのです。

ですが、それ以前に使っていたメールアドレスをあちこちに登録していて、それの切り替えが面倒で元のプロバイダのメールアカウントのみを残しました。その結果が2つのアドレスなのです。

で、このほどそのメールアカウントのみを維持してきたプロバイダの方がサービス内容を一新。追加料金なしで利用できるオプションサービスとしてクラウドストレージサービスの「ULTRA DRIVE」のアカウントがついてきたのです。

このULTRA DRIVE、少し使い込んでみると使いごこちが他の大手のサービスとは少し違っていることに気づきました。そのあたりも含めULTRA DRIVEの使用感を少し詳細にレポートします。

容量あたり単価最安

ULTRA DRIVEの最大の特徴と言えるかもしれないのは、その容量あたりの利用料金の安さです。4TBを一月800円で利用できます。年額にして9,600円。

Google Driveは2TBを1年使うと13,000円になります。容量あたりの単価にすると、ULTRA DRIVEはGoogle Driveよりも2.7倍お得な価格になっています。

ただ、正直機能面に関してはGoogle Drive、iCloud、OneDriveなどの大手の方がかなり上です。そこまで含めたコスパはユーザーの使い方次第、となるかもしれません。

余計なことをしないサービス

ULTRA DRIVEの機能はかなりシンプルです。大手クラウドストレージサービスが備えているような自動化機能の多くが実装されていません。

今風のクラウドストレージサービスではほぼ基本線となった機能である同期の自動化も行なわれておらず、同期が必要な際にはユーザーが手動で実行するようになっています。

こういった部分を捉えて、「気が利かない」サービスと考えるのか、はたまた「システムが余計なことをしない」と前向きに捉えるのかでこのサービスの印象はかなり変わることでしょう。

表に見えにくいところで自動化機能が動いてしまうことがないので、ユーザーがサービスの内容を把握しやすいとも言えます。その代わりクラウドストレージの管理はユーザー自身がほぼすべてを行なわないといけません。

その代わり、うっかり携帯回線利用時にクラウドストレージの同期処理が走って通信データ量が枯渇してしまった、という事故を起こすことはありません。

利用はほぼすべてクライアントアプリから

クラウドストレージの中ではOneDriveとWindows 10の統合が一番進んでいる方になると思いますが、最近のこの手のサービスのトレンドはクラウドストレージを遠隔地にある「別の」ストレージとはあまり意識せずに使える使い勝手の実現だと思います。

OneDriveはかなり有機的にWindows 10のファイルシステムと融合していて、ドライブが遠隔地にあると感じるシーンがほとんどないような使い勝手になっています。アクセスに専用クライアントソフトもいりません。

これに対しULTRA DRIVEはあえてネットワークの向こうにある、パソコンとは「別のドライブ」に見せようとしている雰囲気が感じられます。Windows 10ではほとんどエクスプローラーとのシェル統合が行なわれていません。

このためファイル操作を行なう時にはほぼすべて専用のクライアントアプリを使うことになります。

クライアントアプリとエクスプローラーはファイルやフォルダのドラッグアンドドロップで操作が行えますので、使い勝手自体はなかなか良好です。違和感もありません。

ですがやっぱり別アプリを介する分、「別のデバイス」を使っている感が拭えませんね。この使用感はftpクライアントソフトで外部のサーバに接続しているような感触です。

または、パソコンに「ネットワークドライブの割り当て」をせずにNASを使っている感じになるでしょうか。

とにかくローカルなパソコンに入っているOSとはちょっと距離感を感じるサービスです。

同期機能

ULTRA DRIVEの同期機能は完全に手動で行なうようになっています。

設定の方もかなりシンプルで、領域全体を同期するか「Sync」というフォルダの配下のみを同期するかの2つを選択するだけ。同期の実行はクライアントアプリのボタンをクリックしたときだけ行なわれます。

ULTRA DRIVEは容量4TBのプランしかありませんから、全領域の同期処理は行なわない方がいいかもしれませんね。まあ、大量にデータを投入していなければ大丈夫だとは思いますが。

少なくともWindows 10ではローカル側の同期フォルダが固定されていてユーザーフォルダの配下に格納されますので、場合によってはCドライブの空き容量を圧迫する可能性があります。

こちらの観点でも同期機能は指定フォルダに限った方がいい気がします。

ファイルの履歴機能

ULTRA DRIVEのクラウド側はファイルの履歴管理を行うことが出来るようになっています。バックアップ目的で利用するには使い出の良い機能になるでしょう。

管理可能なバージョン数は10個までに限定されますが、なかなか高機能なバックアップが行えます。

共有

ULTRA DRIVE上のファイルやフォルダを共有する機能も準備されています。

機能の呼び方がちょっと面白くて、あるファイルやフォルダへのアクセス用URLなどを含めた情報を「チケット」としています。

この情報(アクセス用URLとパスワード)をファイル共有を行ないたい相手に提供することで、かなり安全かつ簡単に情報共有が行えます。

このチケット発行の際にはアクセス権も設定できて、メンバーが指定したフォルダにデータを追加するとか既存データを更新する、といったことも可能になっています。

仕事仲間の共有ワークスペースとしてULTRA DRIVEを活用することも出来る訳です。

バックアップ

ULTRA DRIVEのクライアントアプリにはシンプルですがローカルファイルをクラウドストレージ側にバックアップする機能が搭載されています。

バックアップを採取するファイルやフォルダを指定して自動でバックアップを採取することも可能です。また、非定期に発生するバックアップが必要なデータをその時々手動でバックアップすることももちろん可能です。

クラウドストレージはどこかのデータセンターに保管されるものですから、物理的に保存場所を分けることが出来るようになる訳で、ある意味とても理想的なバックアップメディアと言えます。

帯域制限あり

ULTRA DRIVEはアップロード方向にやや厳しめの帯域制限がかけられています。ここまで使い込んでみた感触では15Mbpsぐらいで転送速度が頭打ちになる感じです。

このため大量データを一気にULTRA DRIVEに転送するにはかなりの時間が必要になります。じっくり時間をかけて順番にアップロードを行なうしかありません。

その代わりダウンロード側は特に帯域制限はなさそうな気配で、その時の状況次第ではありますが回線のフルパフォーマンスに近い転送速度が出る雰囲気です。

裏技

ULTRA DRIVEにはさらお得にサービスを利用する方法があったりします。運営会社が同じプロバイダサービスのリムネットのプランを契約する方法です。

基本ホームページサービスとメールアカウントだけを利用可能なレギュラープランに、ULTRA DRIVEまたはカスペルスキーの利用権がついてくるのです。このプランの月額利用料金は550円。年額でも6,600円。

普通にULTRA DRIVEを契約するより1年あたり3,000円おトクになります。

まとめ

ULTRA DRIVEは機能などをシンプルにした分、おトクな利用料金を実現したクラウドストレージサービスです。容量あたり単価は恐らく業界最安級。

OneDriveなどのモダンな機能を備えたクラウドストレージとはちょっと違う使いこなしが求められますが、大容量のクラウドストレージが欲しいユーザーには有力な選択肢の一つになるものだと思います。