インテルの10nm世代CPUの本命Tiger Lakeようやくローンチへ

インテルプレスリリース
インテルのTiger Lakeなどのプレスリリースより

多くのPCユーザー、ファンがご存じの通りインテルは新しいCPUの製造プロセス、10nm世代への切り替えにおいて「ドはまり」しました。(あるいはし続けている)

CPUのマイクロアーキテクチャの更新も上手くいかず、基本設計がかなり古くなってしまった現行のCoreプロセッサシリーズで対抗せざるを得なくなっています。

結果として特にデスクトップ向けCPUでは明らかに性能面・電力効率面でAMDのRyzenシリーズに先行を許しシェアを失いました。その流れはこれまでほぼインテルの独壇場だったノートPC向けCPUにも及び始めています。

この状況の打開策となり得るかもしれない、インテルの10nm世代のCPUの本命がようやく世に出ることになりそうです。コードネームTiger Lakeと呼ばれている第11世代のCoreプロセッサになるかもしれない製品がそれです。

製造プロセス作り直し&MA改良

インテルはIce Lakeと呼ばれるシリーズの第10世代のCoreプロセッサでようやく10nm世代のCPUの大量生産にたどり着きました。

ただIce Lakeシリーズを製造している10nmプロセスは動作周波数を上げにくい特性になっていたようで、CPUのマイクロアーキテクチャはかなり素性が良さそうなものだったにもかかわらずモデルナンバー10000台のCoreプロセッサの全量を置き換えるには至りませんでした。

特に高クロック動作が必須のデスクトップ向けCPU、高性能ノートPC向け製品にはIce Lakeシリーズのものが一つもありません。

こういった状況を打開するためにインテルは10nmの製造プロセス自体の大幅な改良を水面下で進めていたようです。ネーミングをわかりやすくする目的もあるとは思いますが、新10nmプロセスを「10nm SuperFin」と名付けています。

これはインテルがトライゲートトランジスタと呼んでいたFinFETの強化版で、省電力動作時にはより低い電圧での動作、ターボブースト時などTDPの制約を取っ払えるときにはより高クロックでの動作を両立可能な優れた特性を持つもののようです。

これによりTiger Lakeシリーズの実効性能は大きく上がることが期待できます。

元々Ice Lakeシリーズで使われていたMAのSunny Coveはかなり素性が良いようで、ブースト時のクロックが上がらないIce LakeシリーズCPUでもかなりの実効性能を発揮していました。

Tiger Lakeで使われるWillow CoveはさらにMAに改良が加えられ、特にキャッシュ階層や容量などは完全に見直しが図られています。

これらの合わせ技でTiger Lakeはより高い電力効率、ピーク性能を期待できる製品になりそうです。

iGPUは遂にXeに

インテルは統合GPU、独立GPUに使える新アーキテクチャのGPUであるXeの開発を進めてきましたが、Tiger Lakeにはこの低消費電力版であるXe-LPが搭載されることが決まっています。

これまでのインテル製GPUよりもグラフィクス処理の効率に振ったMAを持つもので、さらにTiger LakeではIce Lakeよりも大きなEU数(96EU)を持つことも発表されました。

CPU単体でカバー可能なタスクの範囲がさらに拡大することが期待されます。

ちなみにXeはHPC用途向けだけではなく、一般のゲームユーザー向けの独立GPUであるXe-HPGがリリースされることも発表されています。

周辺インタフェースも最新に

Tiger Lakeでは周辺機器との接続用インタフェースも最新のものになります。

PCI Expressはバージョン4.0に対応。USB、Thunderboltも4.0対応です。さらにメモリはDDR4-3200まで、LPDDR4x-4267に対応します。LPDDR5-5400への対応もうたわれておりiGPUの高性能化による帯域不足に高速メモリで対応する方向のようです。

CPUコア側はAVX512系の拡張命令で、ディープラーニングを強く意識したVNNIに対応。統合GPUのXe側もやはりディープラーニングで使いやすいINT8の処理が行えるようになっていて、パッケージ全体として強くAI用途を意識したCPUになりそうです。

Tiger Lakeシリーズは既に大量生産ラインに載っているとのインテルのリリースで、2020年の年末商戦には採用製品が世に出るとのことです。

ただ、雰囲気的には2020年中に世に出る製品は恐らくノートPC向けのTDP 25Wクラスまでとなりそうです。高性能ノートPCやデスクトップ向けの多コア製品は来年になるのではないでしょうか。

それでもやっとインテルが本当の意味でAMDのCPUと戦うための武器を手に入れた訳で、今後の展開がちょっと楽しみです。どちらのメーカーも頑張って欲しいですね。独占に近い競争がない世界は、メーカーにもユーザーにも不幸ですから。