使う電力次第で性格一変。第10世代の8コアCPU、Core i7-10700を試す

5月28日にインテルの第10世代のCoreプロセッサシリーズのうちXシリーズやiシリーズのK型番ではない、より一般向けのCPU群が一気にまとめて発売されました。

この中には8コア16スレッド対応製品ながら定格のTDPが65Wを実現するチップ、Core i7-10700が含まれています。そのほかローエンドとなるCeleronシリーズやメインストリーム候補で4コア8スレッド対応となったCore i3なども含まれています。

今回、著者はかなり久々にメインパソコンのプラットフォームを一新。ちょっと頑張ってCore i7-10700ベースで納得のいく構成のPCを組んでみました。

まずはCPUであるCore i7-10700のCPU性能をレポートします。

使っているパーツ

今回組んだ一台ではこんなパーツを使っています。予算が何とかなりましたので、ちょっと贅沢構成にしてみています。

CPU Core i7-10700
ヒートシンク Noctua NH-U12S
メインメモリ ADATA DDR4-3200 8GB x 8
マザーボード ASRock Z490 Steel Legend
SSD ADATA XPG SX8200 Pro 512GB
ビデオカード SAPPHIRE PULSE Radeon RX5700
電源 玄人志向 750W Gold フルモジュラー
ケース クーラーマスター Silencio S600 TG

久々の組み立てだったのと、ケースの裏面配線スペースを活用しようと考えた関係で組み上げにはちょっと時間がかかりましたが、Windows 10導入自体はセットアップまで含めてわずかに10分。一発起動でした。

Windows 10 ProのDSP版を購入していますが、インストールにはメディアクリエイションツールで作成したMay 2020 Update版のUSBメモリを使っています。

リードがそこそこ速いUSB3.0対応のUSBメモリがオススメです。書き込みが速いものは高いので、リードさえある程度の性能があれば安物でOK。

サクッとOSを入れるちょっとしたコツです。

Core i7-10700のスペック確認

まずはCore i7-10700のスペックも一応確認しておきましょう。

Core i7-10700はComet Lake Sと呼ばれるコードネームを持つ製品で、第10世代と言いつつもCPUコアのマイクロアーキテクチャは第9世代、第8世代と変わっていません。製造プロセスもインテルの14nmプロセスのまま。

製造プロセス自体はものすごく熟成が進んでいますので、かなり高クロックまで普通に回るのが特徴です。

コア数は8コアでハイパースレッディング対応。定格クロックは2.9GHz、ブースト時には1コア、2コア負荷の場合には最大4.8GHz、全コア全負荷状態だと最大4.6GHzまで回る仕様です。

TDPはこの中身のインテルCPUとしてはかなり控えめな65W設定。この部分が実効性能にかなり影響を及ぼしています。

統合GPUも搭載していますが今回は使用していません。

一応スペックの方は24EUを搭載するものでSP数換算だと192。オフィスワークや軽い3Dもののゲームぐらいならまかなえる性能はあります。

簡単なベンチマーク

まずはザックリとCPU性能を見るためにCPUベンチマークの定番中の定番、CINEBENCH R20を実行してみます。

とりあえずは定格動作状態で性能を見てみます。

1スレッド実行で485pts、16スレッド実行で3758ptsとなりました。

動作中のクロックは1スレッド実行の時には概ね4.7GHz程度で推移。CPUのスペック的には4.8GHzまで回るはずですがその数字が見られることはありませんでした。

16スレッド実行で8コア全部に全負荷がかかった状態だと、ベンチマーク開始から数十秒はスペックシート通りの4.6GHz程度で動作しますが、その後「パワーリミットスロットリング」状態に入ってクロックは3.5GHzに低下しました。

この影響・制限により全コア動作でのスコアがこの数字に留まることになったようです。シングルコア動作でのスコアとの比もその関係でイマイチ伸びていませんね。

これはTDP枠による性能限界だと思います。Core i7-10700はTDP 65Wの製品ですので長時間負荷をかけたときの発熱/消費電力を65W程度に抑える制御があるため、仕様上は許容されている周波数上限までクロックを上げ続けることが出来ないのです。

このためCINEBENCH R20の全コア全負荷状態のテストでは、下位モデルである6コア12スレッドのCore i5に負ける、なんて現象も報告されています。

ただ、CINEBENCHは一般的なアプリとは異なり本当にCPUが全負荷状態で回ります。より一般的なアプリなら重たい処理を動かすものであっても、本当にCPUを100%使い切ることはありません。

そういった一般的なアプリならTDP 65Wの枠内でもクロックが4GHzを大きく超えて動作することもしばしば。ですので実効性能がそこまで悪いわけでもないはずです。

アイドル時と低負荷時の消費電力

第10世代のCore iシリーズは、高負荷時は電力をジャブジャブ突っ込んで高クロックでCPUを動作させて絶対性能を半ば無理矢理押し上げたような製品です。

ですので高負荷時の消費電力にはある程度目をつぶらないといけません。ちなみにCINEBENCH R20をオールコア動作で動かしたときの消費電力は270W程度になりました。

この測定はシステム用のSSDに加え、データを入れるSSDを3基、HDDを2基追加した状態のものです。

同じ条件で動画配信サービスをブラウザで視聴しつつ、ブラウザゲームの艦これを放置した状態での消費電力は90W前後。

ちなみに、他の周辺機器なしでシステム用のSSD 1基のみを接続しているときのアイドル時の消費電力は40W程度でした。

かなり重装備のマシンを組み上げた感触はあるのですが、アイドル時、低負荷時の省エネ性は思ったよりもずっと優秀です。

実際、高性能な構成のPCでもフルパワーで動作させて消費電力が跳ね上がるシーンというのはさほど多くありません。特に個人ユーザーは。ですので実際にPCがトータルでどれぐらい電力を食っているのかは、実はこういった低負荷時の消費電力の方が影響が大きいはずです。

第3世代のRyzenシリーズは高負荷時の電力効率が抜群にいいですが、アイドル時に消費電力がやや高めです。トータルの実効的な消費電力ではどちらが上になるか、実は微妙な所を残すのかもしれません。

今のCPUと長時間パワーリミット

CPUの言わば「自動オーバークロック機能」であるターボブーストなどの機能が導入されてから、CPUの定格クロックにはほとんど意味がなくなりました。ほとんどすべての状態で負荷がかかれば定格クロックを超える周波数でCPUが動作する状況が普通に生じるからです。

そして今はTDPの方の意味も少々微妙になってきています。まあ、元々は「Thermal Design Power」、熱設計のための指標であってイコール消費電力というわけではないのですけれども。厳密には。

とはいえCPUにおいてはおおむね発熱=消費電力ですので、TDPがCPUの消費電力の目安として使われます。

ですが最近のCPUは負荷がかかってから少しの間はTDP枠を大幅に超える電力の消費を許容する設計・制御が行なわれるようになっています。特にインテルCPUで顕著ですが、K型番などの性能追求モデルでは長時間の稼働でもかなりの電力消費を許容する設定が出来ます。

この辺りにはマザーボードの設計・設定に大きく依存する部分があるのですが、例えば著者のマシンの環境ではCore i7-10700は全負荷がかかった状態で最初の28秒間はなんと「224W」もの電力消費を許容する設定になっています。

まあ、実際にはCore i7-10700だとCPUコアの消費電力は170~180Wで頭打ちになるようではあるのですが。

この最初のブースト時の許容消費電力がPL2と言われるものだと思います。

これに対してその初期ブースト時間が終わった後の消費電力制限の方はPL1、Power Limit 1と呼ばれています。こちらはCore i7-10700ではキッチリ65W設定になっていて、ここが全コア・全負荷状態でのクロックが上がらない理由です。

つまり今のパソコンのCPUでは、単純な動作クロックのスペックだけでは本当の意味での実効性能が読めなくなってしまっていると言うことです。PL1、PL2の設定はマザーボードごとに変わる可能性がありますので。

超強力なインテル謹製ツール「Intel Extreme Tuning Utility」

通常であれば前の節で述べたような電力制限などの設定はマザーボードのUEFIからパラメータをいじってやる必要があって、設定ごとにいちいち再起動が必要になる面倒な作業になります。

ですがインテルCPU向けにはインテル自体が作成したものすごく強力なツールが準備されています。それが「Intel Extreme Tuning Utility」です。

本来はCPUの動作クロック設定のロックが解除された「K型番」CPUのオーバークロック用のツールのようなのですが、このツールを使うとK型番ではないCore i7-10700でも使用電力の制限、PL1やPL2の設定を自由に調節することが出来ます。

さらにこのツールが優れものなのは、それら本来はPCの再起動を必要とするような非常にメタな設定も再起動なしでアプリ画面から一発で行うことができるところにあります。

ものすごく直観的、かつ迅速に設定を変えることが出来ます。

このツールを使って実際に色々と設定変えながらCore i7-10700の性格をチェックしてみました。

長時間パワーリミットを調整してCPU性能を見る

前節で説明したIETUで長時間パワーリミット(PL1)を調節してCINEBENCH R20の性能を見てみました。

1コア実行に関しては65Wの設定のままでも電力にはかなり余裕がありましたので、全コア・全負荷状態でのスコアのみ計測しています。

PL1を150Wに設定したときのスコアは4727ptsまで伸びました。65W設定時の約26%増しの数字です。劇的と言っていいぐらいに数字が伸びますね。

Ryzen 7 3700Xのスコアが4700台中盤と言ったところのようですので、ここまで電力を投入するならばほぼ拮抗する性能が出せると言うことのようです。

この時、動作クロックは4.5GHz程度で仕様上可能な4.6GHzには届いていません。室温25度程度の状態でコア温度が80度に迫りましたのでそれ以上の設定は回避しています。

計算上は4.6GHzで回し続けられれば微妙にRyzen 7 3700Xを超えられるかもしれません。ただ、やはり電力効率は考えてはダメ、という形になります。

ここまで電力を食わせると発熱の方はかなり激しくなるはずですので、高性能のCPUヒートシンクは必須になります。リテールのヒートシンクでは絶対に冷やしきれません。

こちらのチューニングに挑もうという方は空冷ハイエンド級や比較的本格的な水冷式クーラーを準備しましょう。また、マザーボードもある程度の価格で「VRM」がしっかりしたものをチョイスすることが必要です。

ちなみにこの手のチューニングのやり過ぎはCPUとマザーボードの寿命を縮めるリスクがあります。トライはあくまでも「Your own risk」で。

まとめ

色々と試してみて分ってきたのは、第10世代のCoreプロセッサは許容する電力に合わせて性格が劇的に変わる、と言うことです。

Core i7-10700もTDP 65W枠のままで使っていればそこそこ高性能で発熱も比較的穏やかなまとまりのいい製品ですが、キチンとスペックシート通りに8コア全負荷で4.6GHz駆動を維持させようと思ったら爆熱&高消費電力のCPUに変貌します。

そこまでいくと「絶対性能」の点ではキチンとAMDのRyzen 7 3700Xに対抗できるものは持っているところが面白いです。

ただしCPUパワーを出すときにはどのシーンにおいても「電力効率」の面では第3世代のRyzenシリーズには大きく後れを取っているのも事実です。

ほとんどのユーザーにとってCPUがフルパワーに近い稼働状況になるケースというのは比較的短時間で済むことが多く、普段使いの多くのシーンではアイドルか極めて低負荷の条件の中での稼働になります。

そこまで含めて考えると、実は第10世代のCoreプロセッサもそこまで非エコなマシンにはならないのかもしれません。アイドル時および低負荷時には非常に少ない消費電力で動いてくれるのも事実ですから。

少なくとも無負荷時には第3世代のRyzenシリーズより10W低い消費電力で済みます。

ハードウェアの価格ではRyzenシリーズが仕切り価格を下げている雰囲気があることもあり、明確にCoreプロセッサの方が高価になってしまっているのはちょっと残念。Core i7-10700がRyzen 7 3700Xと同レベル、Core i7-10700KがRyzen 7 3800Xと同クラスの価格だともっと自作PC市場は面白くなっていたと思うのです。