速い安い。ミドルクラスCPUの新主役候補Ryzen 5 3500

しばらく前に第三世代のRyzenシリーズのその時点でのローエンドとして6コア6スレッド対応のRyzen 5 3500がリリースされました。発売当初から1万6千円程度のかなりお手頃価格で市場に投入され人気を博しているようです。

つい先日さらにお手頃な4コア8スレッド対応のCPU、Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300Xが発表されて第3世代のRyzenシリーズがよりお手頃になりましたが、Ryzen 5 3500も今でも十分に魅力ある価格です。

しばらく前からこのRyzen 5 3500で組んだマシンを色々と試してみています。概ね非常に良好な性能や使い勝手、電力効率を示していますが、より具体的な内容をレポートしていきます。

スペック

まずはRyzen 5 3500のスペックから。

Ryzen 5 3500は第三世代のRyzenシリーズのCPUです。第一世代、第二世代のRyzenはマイクロアーキテクチャは同じ、物理設計も同じで製造プロセスが進化したものです。

第二世代のRyzenで使われた製造プロセスはGlobalFoundriesの12nmと呼ばれるプロセスですが、実際の製造プロセスの微細化は行なわれていませんので物理設計をやり直していない第二世代のRyzenはダイサイズ等は第一世代と変わりません。その代わり少し電力効率が上がっています。

これに対し第三世代のRyzenはマイクロアーキテクチャが大幅にアップデートされた「Zen2」になっていて、クロックあたり性能が向上しています。

さらに製造プロセスはTSMCの7nmプロセスに進化。CPUコアのダイサイズが大幅に小さくなり電力効率も向上しています。

7nmの製造プロセスは製造コストがすごく高いので、第三世代のRyzenでは製品の価格を抑えるための工夫を行なっています。CPUのコア部分のみを7nmプロセスで作りI/Oやメモリインタフェースをもう少し荒いプロセスで製造した別のダイのモジュール構造として、それぞれをパッケージ内で接合しています。

この構造により非常に柔軟にCPUの構成のコンフィギュレーションを変えられるようになりました。Ryzenブランドで16コアCPUを投入できたのもこの構成のおかげです。

ただ、この作りが第三世代のRyzenの性能に微妙に影響を及ぼすかもしれません。

Ryzen 5 3500は6コア6スレッド対応のCPUで、本来は4コアを内蔵するコアコンプレックス(CCX)を2つ内蔵。それぞれのCCX内で1コアずつCPUコアが無効化されています。

第三世代のRyzenで特徴的なのは非常に大容量の三次キャッシュをCCX側に備えているところ。メモリコントローラがCPUコアから分離された構成なのでCPUコアから見るとメインメモリが「遠く」なります。大容量の三次キャッシュはこれをカバーする目的だと思われます。3次キャッシュは合計16MB。2次キャッシュは合計3MBを搭載します。

動作クロックは定格最大3.6GHz。ブースト時は4.1GHzまで上昇します。

TDPは65WでPCIe 4.0に対応します。

使用感は当然上々

今風のマシンですから一般的なOS等々の使用感に引っかかりなどを感じるケースはありません。OSを高速SSDに入れメインメモリもデュアルチャンネル構成で8GB積んでいますから、Windows 10の起動は非常に高速で起動後にレスポンスが悪くなる時間もほとんど気づけない程度です。

アプリの起動やアプリの操作も極めて快適。今のPCだと当たり前のことではあるのですが、そういうのが当たり前の環境を非常にリーズナブルに手に入れられるのはとてもありがたいことです。

消費電力の方はきちんとTDPの枠に収っていそうな感じです。

AMD製の「Ryzen Master」というアプリを入れるとかなり詳細に消費電力や動作クロックなどの情報を読めるのですが、6コアが全負荷状態でもCPUパッケージのトータル消費電力は60Wをちょっと超える程度に収っていそうです。

このため発熱の方はかなり穏やかです。リテールのヒートシンクはそこまで高性能なものではなさそうな雰囲気ですし使われているシリコングリスもごく普通のもののようですが、負荷をかけたときのCPUコアの温度はかなり控えめ。夏の室温が高い状況の中でも安心して負荷をかけられそうです。

Ryzen Masterの情報を見ていてちょっと気になるのは、I/Oやメモリコントローラを内蔵したダイの消費電力に相当するのではないかと思われる「SoC Power」の部分の消費電力がアイドル時でもあまり落ちないことです。

CPUコアはアイドル状態になると積極的にスリープ状態まで移行して消費電力を抑えようとするのとは対照的な動きに見えます。

その分がアイドル時の消費電力が落ちきらない理由の一つかもしれません。Radeon RX570を積んだマシンではアイドル時の消費電力が50W程度あります。

その代わりフルパワーで稼働しているときの省電力は低めです。110W程度に収ります。

ベンチマーク

純粋なCPU性能を見るために定番のCINEBENCH R20を実行してみました。
スコアの方は以下の通り。

1スレッド実行で458pts

6スレッド実行では2497ptsまでスコアが伸びました。

CPUの世代が大分異なりますが、6コアで12スレッド対応のCore i7-4930Kを4GHzで駆動した時に1スレッド実行で288pts、12スレッド実行で2114ptsですからCPUの進化の度合いを痛感させられる結果になっています。

3DMarkも実行してみたのですが、CPU scoreの伸びがさすがです。

4コア4スレッド対応のRyzen 3 3200Gで3,357ポイントだったものが、4,904ポイントまで伸びました。動作クロックも微妙に異なりますので厳密には言えませんが、ほぼコア数比の1.5倍に近い性能を叩き出しています。

ちなみにグラフィック性能の方はほとんど変化はなしです。

かなりのパワーをお手頃価格で

ベンチマークテストの結果が示すとおりRyzen 5 3500はかなりのパワーを持つCPUです。何世代か前のハイエンド級の4コア8スレッド対応CPUをも超えるぐらいの性能を持つかもしれません。

価格面でもリテールのヒートシンク付きの製品が1万6千円程度で入手可能になっていて、B450チップセットのマザーボードとの組み合わせならばかなり手頃な価格で1台組むことが出来ます。

400番台のチップセットではPCIe4.0に対応できなくなりますが、現状PCIe4.0に対応する周辺機器はごく一部のビデオカードとSSDのみです。性能的にも困ることはほとんどないでしょう。

電力効率もかなり優秀ですから、新しいメインストリームクラスのCPUの主力になれるだけの資質を持ったCPUと言えると思います。