モバイル向け第3世代RyzenシリーズはUプロセッサも8コアへ

2020年のCESにてAMDがモバイル版第3世代のRyzenシリーズを発表しました。

上位のSKUでは8コア16スレッド対応の製品となることが大きな特徴で、U型番の製品でインテルの第10世代のCoreプロセッサに対し最大90%高いマルチスレッド性能を持つとしています。

この第3世代Ryzenのモバイル版の中身をご紹介します。

Zen2アーキテクチャ

モバイル版第3世代Ryzenシリーズでは、CPUのマイクロアーキテクチャにはデスクトップ版同様に更なる性能改善を図ったZen2アーキテクチャを採用しています。

これによりさらに高いIPCを実現しTSMCの7nmの製造プロセスとも相まって、さらに高い性能と電力効率を実現しています。

Zen2アーキテクチャではAVX命令の実行ユニットも256bit対応化されていますのでベクトル演算性能は単純に2倍になります。他の構成も改良が加えられ、Coreプロセッサと同レベルのクロックあたり性能を実現します。

チップレットではない

デスクトップ版の第3世代Ryzenシリーズは、CPUコア部分とメモリインタフェースやI/Oプロセッサを分離、別ダイとし、コストが非常に高い7nmの製造プロセスはCPUコア部分にのみ適用するチップレット構造を取っています。

これに対してモバイル版は精度の高い電力管理を行なうためにチップレット構造を止めています。

周辺機能も1チップ化して7nmの製造プロセスで作られます。

この辺りはCPUのコスト面にはマイナスの要素になると思われます。また、CPUダイのバリエーションの作り分けにも影響するかもしれません。

その代わり元々消費電力を低く抑えやすい7nmの製造プロセスの特徴とも相まって、TDP 15W級のUプロセッサにも8コア16スレッド対応品を展開できるようになっています。これは非常に大きなアドバンテージと言えるでしょう。

Ice Lakeより90%高速

AMDのプレスリリースでは第3世代のモバイルRyzenシリーズは、マルチスレッド性能でIce Lake系の第10世代のCoreプロセッサより9割高い性能を発揮するとしています。

ですがこれは比較対象が4コア8スレッド対応製品だから、と言うことにはなります。現時点でIce LakeシリーズのCPUの最上位は4コアに留まるからです。

それでもマルチスレッド処理においてコア数の比率にかなり近い性能差を出せるというのは、かなり優秀な性能と言っていいと思います。

CES 2020ではインテルも次の世代の10nmプロセスで製造されるCPUであるTiger Lakeシリーズの発表を行なっています。このシリーズでどれだけのコア数のCPUまでが準備されるかは分りませんが、もし本当の意味での性能の勝負を行なうならば、モバイル版第3世代Ryzenの相手はTiger Lakeの方なのかもしれません。

統合GPUはVegaベース

ちょっと残念なのは統合されるGPUでしょうか。最新のマイクロアーキテクチャであるRDNAのものではなく、Vegaシリーズの改善版が搭載されます。

ただし動作クロックの大幅な向上とアーキテクチャの改良により、統合GPUの規模は小さくなっていても性能は大幅に向上するとAMDでは述べています。

TDP 45WのHプロセッサも準備

第3世代のモバイルRyzenシリーズには、TDP枠が45Wになる高性能版のCPUも準備されます。本格的なモバイルワークステーションや高性能ゲーミングノートPCに使われるCPUになるでしょう。

こちらの上位機種ではマルチスレッド性能でインテルのデスクトップ版CPUのCore i7-9700Kを上回る性能を実現するとしています。比較に使ったRyzenは8コア16スレッド対応品、Core i7-9700Kは8コア8スレッド対応品で条件が揃ってはいません。それでもノート向けCPUがデスクトップ向けCPUの性能を超える、というアナウンスには非常に大きなインパクトがあります。

既に第3世代のモバイルRyzenを搭載するノートPCのリリースが各メーカーからアナウンスされており、ノートPCの性能の底上げと選択肢が広がることが期待できそうです。