新Radeon、Naviシリーズの詳細と事情

ゲーム関連のイベントE3でAMDの新CPU、GPUのさらに詳細な情報が明らかになりました。その中では次の全く新しいRadeonシリーズ、Navi系列の新GPU Radeon RX 5700の詳細も公開されています。

AMDは現在のゲームコンソールの主流機の心臓部を抑えていますが、次世代のPlayStation、XboxでもAMDがCPU、GPUを製造することがソニー、マイクロソフトから発表されています。

この流れに乗ってAMDはPCゲーム関連の機材でも攻勢をかける方針のようです。

Radeon RX 5700の詳細

最初のNaviシリーズとなるRadeon RX 5700シリーズには2つのSKUがあることが分りました。上位機種となるRadeon RX 5700XTとスタンダードモデルのRX 5700です。

前者には40CU(Compute Unit)、後者には36CUを搭載。SP数に直すと5700XTが2,560個、無印5700のほうが2.304個になります。

SP数に関しては規模はあまり大きくはなく、GCNアーキテクチャのRadeonシリーズでは演算ユニット数を無理矢理気味に大きくして性能を稼いでいたところから方向性を転換しています。

比較的近い性能を持つNVIDIAのGPUと比較的演算ユニットの規模が近い状況に変化しています。

Radeon RX 5700ではVRAMにはGDDR6を採用しました。Radeon VIIのHBM系よりずっとコストが安くなっています。その代わりメモリ帯域は半分弱。演算ユニットの規模を考えると大きく帯域が不足することはないと思われます。

動作クロックはRadeon RX 5700XTでは最大1.9GHzに達し、このシリーズは演算ユニットの規模ではなく動作効率の改善と動作クロックの向上により性能アップを狙った製品になっています。

ここにも7nm世代故の事情が

Radeon RX 5700シリーズが回路規模を大きくしなかったのには7nm世代の製造プロセス特有の理由があります。これは現在の7nmの製造プロセスの製造工程が非常に複雑でコストが高くなっていることが原因です。

このためRadeon RX 5700シリーズではダイサイズを小さく抑えないと採算が取れない構造になっている訳です。

この辺りの事情からこのシリーズは演算ユニット数を大きくすることが難しく、その代わりグラフィック演算処理の効率を上げ、合わせて動作クロックを大きく引き上げることでトータル性能の改善を図ったわけです。

製造プロセスが微細化することで同じ回路規模・動作クロックならば消費電力を下げることが出来ます。消費電力を従来機種同様のレベルに設定すれば、回路規模を大きくするか動作クロックを上げられます。

上記のようなコスト面の制約から、Radeon RX 5700シリーズではプロセスシュリンクによる余裕分を動作クロック向上に振り向けた形になります。

今後7nmの製造プロセスがうんとこなれて製造コストが大きく低下しない限り、7nmプロセスで製造されるCPU、GPUには同じ課題がついて回ることになるはずです。

そういった制約を嫌ってNVIDIAは14nmクラスの製造プロセスを使い続けているのかもしれません。こちらのプロセスならば巨大なダイのGPUを作ってもコスト面の釣り合いが取れるからです。

ただ、いずれはNVIDIAも7nmプロセスに移行するはずではあります。

やはり最初のNaviにはレイトレーシングはなし

さらにE3で分った内容としては、Naviシリーズでのレイトレーシングの扱いがあります。やはりRadeon RX 5700シリーズにはレイトレーシングのハードウェアが入っていませんでした。

「シェーダ」でのサポートという表現を使っていますので、GPUの演算ユニットを使ってソフトウェアで実行する形になるようです。

また次世代のNaviシリーズでは部分的にレイトレーシングをサポートするハードウェアを導入するとしていますが、フル機能はクラウドコンピューティングのサポートが必要との表記になっています。

こうなるとPlayStation 5などに搭載されるレイトレーシングの仕組みがどこまでサポートするのかもちょっと気になるところです。