第10世代Coreプロセッサのより詳細な内容が判明

今年のCOMPUTEX会場でインテルから第10世代のCoreプロセッサのさまざまな情報の発表がありました。

実は多分、10nmプロセスで製造される新CPUがCoreブランドを名乗ることも今回の発表が初めてではないかと思います。

ずっとCPUのマイクロアーキテクチャのSunny Coveで引っ張ってきましたので、もしかしたらブランドネームが一新されるのか?とか想像もしましたが、結局は無難な選択の第10世代のCoreプロセッサという所に落ち着いたようです。

今回はこの中身をもう少し詳しく見ていきます。

IPC向上のために多くの箇所に手が入る

Sunny Coveアーキテクチャに関してはこれまでに何度か技術的な内容がインテルから発表されています。プロセスのシュリンクによって余裕が出来たトランジスタ数をIPC向上のために使うことが知られていました。

それに加え今回さらにIPC向上のための工夫のさまざまなものが見えるようになりました。

ひとつはキャッシュ容量の向上。

ここしばらくのCoreプロセッサは1次キャッシュが32kB+32kに据え置かれてきました。これが1.5倍の48kBずつに拡張されています。また、容量とレイテンシのバランスを取るカタチで256kBに抑えられていた2次キャッシュも512kBに倍増されています。

分岐予測や内部でのマイクロ命令解釈に使うバッファも増量されていて、より効率よく動作させるための仕組みが強化されました。

これによりインテルでは第6世代のCoreプロセッサよりも18%もIPCが向上したとしています。

一般PC向けで初めてAVX512に対応

第3世代のRyzenがAVX命令の拡張を行ない256bitを一気に処理できるようになり、ベクタ演算での浮動小数点演算性能が倍になりました。が、第10世代のCoreプロセッサはさらに1歩先を行きます。

今までXeonやCore Xプロセッサにのみ搭載されていた512bit長のベクタ演算命令、AVX512に対応します。

また、元々は真のメニーコアプロセッサであるXeon Phi向けに開発された新命令セットのVNNI(Vector Neural Network Instructions)にも対応するようになりました。

これはディープラーニングで使われる8bit長の整数演算を効率よく高速に処理するための命令セットで、この命令とターボブーストを含むCPU全体の動的性能チューニング機能により、高い深層学習、機械学習性能を発揮できるようになります。

こういったAI関連技術のサポート機能をまとめて「DL Boost」として前面に打ち出していくようです。

メモリコントローラ強化、Thunderbolt 3統合

第10世代のCoreプロセッサではメモリコントローラが強化され、ようやくLPDDR4系のメモリに対応するようになりました。

合わせてメモリの対応データレートも引き上げられLPDDR4系では最大3,773MHz、DDR系でも3,200MHzに対応します。これは規模が大きくなった統合GPUのメモリニーズに対応する目的もあると思われます。

また、USB4になることが決まっているThunderbolt 3コントローラがCPUダイに統合されました。これで第10世代のCoreプロセッサを搭載するPCでは、わずかな追加コストだけでThunderbolt 3、USB3.1 Gen2のポートを持つことが出来るようになります。

GPUは第11世代に

第10世代のCoreプロセッサに統合されるGPUはGen11、第11世代のものになりGPU側の構成等が一新され、より効率のよいグラフィック処理が行えるようになります。

やはり製造プロセスシュリンクの余裕を活かしてGPUの規模が拡大され、3DものでフルHD、30fps以上で遊べるタイトルが大きく増えているようです。よほど重いゲームでなければ本格的な外部ビデオカードが本当に不要になる時代が来そうです。

統合GPUの規模は32EU~64EU。

FreeSyncといったAdaptive Syncの仕組みにも対応します。

インテルの発表では恐らく最大規模の64EU搭載機だと思いますが、対抗製品になると思われるAMDのRyzen 7 3700Uのグラフィック性能を超える、と発表しています。

YシリーズはTDP 9Wに

タブレットPCなど、ファンレスタイプのマシンに使われるYプロセッサはTDP枠が9Wに引き上げられます。これは熱設計の進化などを織り込んだもので、ファンレスPCがより一般的なクラムシェルタイプのノートPCに近い性能を発揮できるようになるはずです。

また、一般的なノートパソコン向けのUプロセッサは従来通り15W枠と28W枠の製品が提供されますが、15Wの製品の方にはcTDPの仕組みでTDP 25W相当のCPUとして機能させる仕組みが搭載されます。

これによりCPU性能のみならず、グラフィック性能も大きく向上することがインテルのデモで分っています。

対応ゲームは少し限定されるとは思いますが、本当にディスクリートGPUレスのゲーミングノートPCが生まれてくるかもしれませんね。