AMD世界初の7nmプロセス採用PC向けCPU、第3世代Ryzenを投入

2019年のCOMPUTEX会場でAMDは「Zen2」アーキテクチャを採用した新CPU、第3世代のRyzenシリーズの発表を行ないました。このシリーズはPC用CPUとしては世界で初めて7nmの製造プロセスを採用した製品でもあります。

今回はこのCPUの中身をより具体的に見ていきます。

新アーキテクチャ

第3世代のRyzenは開発コードネームがZen2という新しいマイクロアーキテクチャを採用しています。

AMDの新CPUはだいたいが完全にゼロからフルスクラッチし直した製品になりますが、Zen2は現行バージョンのRyzenシリーズが採用しているZenアーキテクチャの拡張版、といった趣です。

もっとも大きな変更はベクタ演算命令であるAVX命令の処理ユニットが256bit長化されて、AVX命令実行時の処理能力が単純に2倍化されたことです。

この部分はZenマイクロアーキテクチャのインテルCoreプロセッサに対する性能上の弱点でした。

ただ、最新の第10世代Coreプロセッサや第9世代のCore Xプロセッサはさらにベクタ長を倍にしたAVX512命令に対応しますので、最新世代同士ではまだインテルCPUにこの部分では分があります。

その他のCPUコア機能も少しずつ改善が入っていますが、7nmに製造プロセスがシュリンクした部分は2次キャッシュを大幅に増量したあたりに使われている雰囲気でもあります。

8コアのCPUコンプレックス当たり36MBもの容量を持つようになりました。

「チップレット」構造

第3世代のRyzenではCPUコア部分はほぼ純粋なCPUコアのみとなり、I/Oやメモリインタフェースを持つダイとは分離される形になりました。これら複数のダイを「チップレット」とAMDでは呼んでいて、チップレットをCPUパッケージの中で高速な内部インタフェースで接続する構造を取っています。

これは7nmの製造プロセスによるチップ製造のコストがかなり高いためと思われます。出来るだけ7nmのプロセスで作られるダイを小さくして、トータルの製造コストを抑える方針でしょう。

そのかわりどれだけ高速な内部インタフェースを使ったとしても、特にメインメモリアクセスではレイテンシ等にペナルティが来るはずです。そういったこともあって巨大な容量の2次キャッシュを搭載しているのかもしれません。

CPUのパッケージ内部の構造にはなりますが、かつてのパソコン向けCPU周辺チップの構造であるCPU+(I/Oとメモリインタフェースを受け持つ)チップセットの構造に先祖返りした、と言えるかもしれません。

この構造を取るとパッケージ内部に複数のCPUダイを持つことで、多コアCPUが比較的簡単に作れるメリットもあるはずです。

シュリンクしても消費電力面のメリットは少ない?

発表された第3世代のRyzenシリーズはハイエンドが12コア24スレッド対応のCPUで、その後ろには8コア16スレッド対応の製品が続きます

12コア24スレッドのRyzen 9 3900Xはパッケージ内部に8コアのCPUダイを二つ内蔵。それぞれ2コアを無効化して消費電力や発熱のバランスを取ったモデルです。TDP 105Wの枠でこれだけのコア数を実現してきました。

その次のランクのRyzen 7 3800Xは8コアCPUですがTDPはやはり105W。第2世代のRyzenよりもTDP枠は広がっていて、ここだけを見ると7nmにシュリンクしても発熱・消費電力面にはあまり大きなアドバンテージはなさそうに見えます。

その分をCPUの性能・機能向上のためのトランジスタ数に裂いた、とも考えられます。

インテルの対応とは対照的

AMDの動きがちょっと面白いと思うところは、性能面では確かにそのアーキテクチャのCPUハイエンドにはなるものの、市場のパイとしてはかなり小さいはずのデスクトップパソコンのハイエンド向けのCPUから発表を行なっているところです。

確かに現在インテルのCPUの供給に問題があって特に自作市場で大きくシェアを伸ばしているRyzenシリーズですが、CPUメーカーとして実際に販売する数がずっと大きいのはノートパソコン向けのCPUのはずです。

第10世代のCoreプロセッサをまずはノートパソコン、タブレットパソコン向けのチップからスタートさせたインテルとはとても対照的な動きになっています。

このあたり、今後の両者の展開にどう影響していくのか、いろいろと面白そうです。

ユーザーとしては、やはり健全な競争がある世界の方が製品の進化のスピードが加速しますから面白いし、そのさまざまな恩恵にもあずかれますね。