4Kディスプレイで作業環境激変。やはり広大なデスクトップは良いものです
ここ数年ずっと27型のWQHD(2,560 x 1,440ドット)のディスプレイを使ってきました。これでもフルHDのディスプレイよりも8割近く多い表示領域を持っています。
導入直後はやはりその「広さ」が非常に便利で各種PC作業の効率化にとても有効に働きました。
ですが写真を扱う際にはカメラが高画素化していることもあり、等倍での画像チェックなどの際には多少画面の狭さを感じるようになり始めていました。
その他の作業でもブラウザで調べ物をしつつオフィススイートで資料を見ながらレポートを作成する、といったときにも、マルチウィンドウ状態で出来るだけすべてのウィンドウを見やすいカタチで作業を行なおうとすると、やはりWQHD解像度のディスプレイでは手狭感を強く感じるようになってきました。
なので思い切ってだいぶお手頃な価格に下りてきた32型で4K解像度のディスプレイを導入することにしたのです。今回はこのクラスの製品では最低価格帯に近いものですが、ViewSonicのVAパネルの製品「VX3211-4K-mhd」を選んでみました。
使い勝手や画質などを簡単にレポートします。
32型をチョイスした理由
今、パソコン向けの4Kディスプレイにはさまざまな画面サイズのバリエーションがあります。
24型、28型、32型、40型クラス、それ以上のもの、などなど。価格面を考えるとやはり一番サイズが小さい24型のものが一番お手頃価格になっています。40型クラスも思いの外、高価ではないプライスタグが付けられています。
で、このようなバリエーションの中からなぜ32型を選んだかというと、「表示可能な文字数としての情報量」を最優先した結果の判断です。
表示できる文字数と表示される文字のサイズを上手くバランスさせないと、この条件を上手く満たすことが出来ません。
もし21.5型フルHDと100%表示で同じ文字サイズを実現しつつ4K解像度を得るには、ディスプレイパネルの大きさは43型が必要になってしまいます。さすがに横幅が1mを超えるような43型ディスプレイの導入は多くのユーザーが出来ませんよね。
そのあたりの関係で、ディスプレイの物理サイズと表示される文字の大きさをギリギリ妥協できそうなのが32型の4Kディスプレイではないか、と考えました。
もし24型で4Kのディスプレだと、100%表示のままではシステムフォントは豆粒に近い状態になって恐らく判読できません。
スケーリングを150%とかに設定すると今度は1画面に表示できる文字の数が減って、せっかくの解像度を文字数としての情報量に活かすことが出来なくなります。
Windows 10でフォントをスケーリング100%のまま拡大することなく普通に読めることを条件にすると、一般的なディスプレイのサイズよりも2周り以上大きな32型の画面がいるのです。
それでも32型4Kディスプレイのピクセルピッチは0.181mmしかなく、文字は100%表示のままだと21.5型フルHDディスプレイの72%のサイズです。
これを普通に判読可能かどうかはそれぞれのユーザーの視力にもかかわる問題で、万人に当てはまるかどうかは微妙なところではあります。個人的には現在のところ問題なく利用できていますが。
広大なデスクトップ
4K解像度のデスクトップはWQHD解像度のそれの2.25倍の表示エリアを持っています。このためディスプレイを交換してセットアップを終わらせた後、最初にいつも通りブラウザとメーラを起動したところでその広大さに驚きました。
実際に驚いたポイントは、正確にはデスクトップの「空き部分」の広さに、です。
それまではオーバーラップさせてブラウザとメーラを横に並べて表示させて利用していました。が、4Kディスプレイの横の解像度だと、どちらも十分に大きな表示にしても横幅が余りまくります。
なのでもう1ついつも使っているアプリのウィンドウを並べて3列表示の状態に切り替えました。それでもウィンドウそれぞれをオーバーラップさせる必要がありません。
また、写真を操作するときにも画面の広さがすごく便利に使えます。
使っているカメラの写真の縦横比は3:2、4Kディスプレイの縦横比は16:9ですから、写真を画面の縦方向いっぱいにまで拡大した表示にすると写真のプレビューウィンドウの横に空きスペースが出来ます。この部分にツールパレットを置けます。
高解像度のディスプレイですからツールパレットも置き放題に近くなります。これがかなり便利です。
2000万画素クラスの写真データも等倍表示で写真の3割以上をいっぺんに詳細な確認が行えますから、非常に写真作りの作業の効率化に役立ってくれます。
VA型パネルらしい発色
今パソコン用の一般的なディスプレイはIPS型パネルが主流になっています。
ですがFPSなどテンポが非常に速いゲーム向けには液晶の表示レスポンスが速いTN型も使われ続けています。32型や43型など大型のパネルを使ったディスプレイではVA型パネルの製品も戻ってきています。
そして今回手に入れたVX3211-4K-mhdもVA型の液晶パネルを採用した製品です。
VA型パネルの特徴は鋭いあざやかな発色と黒の締まりの良さで、ネイティブコントラストがIPS型などよりもかなり高いことが挙げられます。IPS型では1:1000程度のネイティブコントラストが一般的ですが、VA型だと1:3000のコントラスト比を実現できる製品が普通です。
VX3211-4K-mhdもその例に漏れず原色系は非常に鋭い発色で黒が本当に黒い。
既存の写真や映画などのコンテンツを楽しむためには非常に適した性格のディスプレイに仕上がっていると思います。
その代わり写真を作る環境には標準設定だとちょっと発色は暴れ気味かもしれません。加えて初期設定だとものすごく輝度が高い設定になっているため、思い切って明るさを絞らないと長時間の作業には向いていません。目が疲れますね。
初期状態の色合いはかなりマゼンタが強め。グレーもそちらに引っ張られる感じです。
いろいろと調整は試したのですが、結局のところ映像モードを「映画モード」にしてマゼンタを少し押える設定で落ち着きました。写真を調整するにも十分使えるぐらいのトーンを確保できるようになりました。
ペイント系のソフトでグラデーションを作ってみたところ、グレーでもRGBの各原色でもトーンジャンプなどは発生していないようですので、階調表現にも十分な色再現性は確保できているようです。
低価格帯のディスプレイながら実はこの製品、広色域対応のディスプレイです。色域のカバー面積でNTSC比95%、NTSC色域とのマッチ率でも86%のスペックを持っています。
NTSC色域はパソコンで一般的なsRGB色域よりも赤と特に緑の表現力が豊かです。その差がきちんと見た目に現れています。緑と赤の原色に近い発色はすごく鋭い色合いになります。
青の表現に関してもsRGBディスプレイと比べて不足はない感じですので、色域としてはAdobeRGBに近いものを持っているのかもしれません。スペックとしては触れられていませんが。
コントラスト変化はパネルのタイプなりのレベル
VA型はIPS型のパネルに比べると斜めから見たときのコントラストの低下具合が大きめです。色相が狂うことはほとんどありませんが、白っぽくなって判読がしにくくなります。
液晶パネルの視野角を云々する時には色の変化やコントラスト変化はあまり考慮されていなくて、確かコントラスト比が1:10ぐらいまで低下しても書いてある文字が読めればOK、と言った条件ではなかったかと思います。
なので一般的にイメージする視野角とカタログスペックの視野角は一致しにくいでしょう。
VX3211-4K-mhdだと横方向は斜め45度ぐらいからのぞき込むぐらいになるとコントラスト低下を感じ始めます。上下方向はもう少し角度にシビアでコントラスト低下が表れやすい感じですね。
このため角度調節をしっかり行なって出来るだけ正面からディスプレイを見られるセッティングをした方がいいでしょう。
ちなみに液晶のどの方式も一長一短はありこの方式を選んでおけば万事OK、みたいなお話ではありません。
角度による色やコントラスト変化はIPS>VA>TNのイメージ。ネイティブコントラストはVA>IPS>TN。表示のレスポンスはTN>VA>IPSです。
かつては発色等々の面でハンデがあるとされてあまり好まれなかったTN型もしっかり今でも高レスポンスのゲーム用として生き残っていますから。
どの方式も以前のイメージより弱点をずっと埋めてきていますので、頭ごなしに「~方式だからダメ」はちょっともったいないですね。
操作系はちょっと微妙
ディスプレイの明るさや色調整、入力ソースの切り替えなどはOSDメニューを使って行えます。が、この操作のためのボタンがなぜかディスプレイ裏側についている変態(?)仕様。
このため操作感はお世辞にも良いとは言えません。慣れれば少しはマシにはなるのですが。
ただOSDメニューの日本語化はきちんとしています。デフォルトで言語モードは日本語にセットされていましたし、表示されるフォントもきちんと日本のフォントです。半分中国漢字になったりするような変なローカリゼーションではありません。
また、スタンドは金属製のしっかりしたものではありますが、ディスプレイを動かす自由度がディスプレイの角度を上下に動かす1つしかありません。
高さを変える上下スライドや左右に振る仕組みがないので、そういった調整がまめに必要な方はディスプレイアームを用意する必要があります。ディスプレイ本体は薄くてとても軽いので、一般的なディスプレイアームで十分に事足りるはずです。
総評
調整する前は色再現が少し暴れていたり標準の輝度設定が異様に明るいなど初期設定には少し疑問は残りますが、そこをきちんと調整できれば非常に良く出来たディスプレイになってくれます。
購入時には税込み42,800円で手に入れられましたので、4Kディスプレイも随分と身近なところまで下りて来てくれたものだと感激しました。
4Kディスプレイの表示エリアはフルHD解像度のディスプレイの4倍あります。さらに縦方向の解像度はフルHDディスプレイを縦にして使うよりもさらに長い。
表示できる情報量はやはり圧倒的と言えます。
ここまで来るとディスプレイパネルの縦横比はいくつが使いやすい、といった議論自体があまり意味を成さなくなる気すらします。
個人的にはスケーリングは100%のままでWindows 10のシステムフォントなども問題なく利用が出来ていますが、こちらはそれぞれのユーザーの視力などとの相談となると思います。
一般的にはスケーリング125%程度を設定するのが適切かもしれません。
この設定だとドット密度は27型のWQHDディスプレイと同レベルになり、フォントのサイズの問題はかなり減るでしょう。また、その設定を行っても32型で3,000 x 1,700ドット程度のディスプレイと同レベルの文字数としての情報量を確保できます。
設置場所さえ確保できるなら、作業効率の改善に最適なディスプレイの一つとしておすすめしたいジャンルの製品ですね。
ちなみにディスプレイ本体の幅は75cm弱で思いの外大きくはありません。
P.S. 4K導入可否のチェックポイント
パソコンで4Kディスプレイを導入するにはまだちょっぴり高いハードルがあります。お手元のハードがきちんと4Kの映像出力が出来るか確認しましょう。
HDMI端子を使う場合には対応しているバージョンをチェックします。4Kで毎秒60コマの表示のためにはバージョン2.0以降が必須になります。
使うHDMIケーブルも同様にHDMI2.0対応が必要です。
デスクトップパソコンのビデオカードの目安としてはカードがDisplayPortの映像出力端子を持っているかどうかが分りやすい目安です。これがあるビデオカードなら、まず4Kの出力が出来るでしょう。