初めてのPC用をうたうSnapdragon 850リリースへ
昨年末、ArmアーキテクチャCPUを搭載するSoC、クアルコムのSnapdragonシリーズで動くWindows 10が発表されて大きな話題となりました。
実機も登場し実用性の高さも各メディアで話題になっています。
ですがマシンのトレンドとしては今ひとつ盛り上がっていない、というのが実際の所だと思います。最初に登場した機種以降、フォロワーが出ていないのがその一番のエビデンスではないでしょうか。
そういった状況に活を入れるためか、クアルコムは初めて「PC用」と銘打ったSoC、Snapdragon 850をリリースすることを発表しました。今回はこのSoCにまつわるお話をまとめてみます。
Snapdragon 845のクロックアップ版?
Snapdragon 850のCPU部は、現状クアルコムでは最も性能の高いコア、Kyro 385を8つ搭載するオクタコア構成になっています。
スマートフォン用のSnapdragon 845では8つのコアのうち4つの動作クロック、キャッシュメモリなどのスペックを抑えることで高効率コアとして動かしています。CPUコア自体は同等のものながら、Armアーキテクチャ独特のbig.LITTLE構成を取っています。
850についてはこの辺りの情報がなさそうなのですが、CPUの構成自体に変わりはなく、単に動作クロックの上限が少し上がっている程度なのではないかと予想します。
CPUコアは845の最大動作クロック2.8GHz程度に対し、850では2.96GHzまで許容されています。同様にGPUなどの動作クロックも引き上げられている可能性がありそうです。
スマートフォンよりも排熱処理に余裕のあるPCの筐体を勘案して、ファンレス動作可能な範囲でTDPの枠を一段高く取っていることが予想されます。
タブレット型をベースとした2in1 PCの形状ならばSoCには5W程度のTDPは楽に使えるはずですから、スマートフォンよりも格段に熱処理は楽になるはずです。
その他のDSPや映像エンジン、Wi-FiやLTEのモデムなどはSnapdragon 845からのキャリーオーバーになりそうです。
常時接続・常時稼働
Snapdragon 850でもクアルコムのキャッチコピーはやはり常時接続がカギになるようです。
加えてパソコンの筐体に内蔵できるバッテリーの容量ならば20時間以上の連続駆動が可能なことから、常時稼働もウリとする形になりそうです。
ただ、インテルのCoreプロセッサ搭載機でもYプロセッサを採用する機種には連続20時間近い稼働時間を実現する機種が出始めています。ですのでSnapdragonならではのバッテリーライフの観点での強みは、スリープ状態での非常に長い待ち受け可能時間になるポイントとなるのではないかと思います。
常時接続によるコネクテッドスタンバイ状態でかなり長い時間放置しても大丈夫、と言う点を前面に出す製品のマーケティング施策をとる方向になると予想します。
ネットワーク接続関連のスペックでは、LTEモデムは最大下り1.2Gbpsのリンクアップ速度に対応。Wi-FiはIEEE802.11acの2×2に対応、Bluetoothはバージョン5対応となります。
GPSセンサーはメジャーどころの測位衛星に対応していますが、日本人には残念なことにみちびきに非対応となっているようです。
採用製品続々登場予定
Snapdragon 850を採用するパソコン製品の登場は既にかなりの機種数がアナウンスされています。
ASUSから「NovaGo」という新ラインの製品が登場予定です。
HPからはEnvy x2のブランドで新製品が登場予定です。HPはこのブランドネームでインテルアーキテクチャの全く同じ性格の2in1 PCも発売したばかりですので、住み分けをどう行なうのかがちょっと面白くなりそうです。
LenovoはMiix 630が登場予定となっています。また、2018年のうちにはサムスンからもSnapdragon 850搭載製品が登場の予定です。
今、既に発売されているWoSデバイスはSnapdragon 835を採用していて、その機種でもかなり高い実用性能を持つようになっています。より高い性能を持つSnapdragon 850とArmネイティブにコンパイルされたアプリの増加で、Snapdragon版Windowsの使い勝手もより改善されることが期待できそうです。