Arm版Windows 10いよいよ始動へ。ASUSとHPから実機登場

クアルコムのWoAデバイスのニュース記事のページ

スマートフォンの心臓部であるSoC開発の大手クアルコムの開いた技術者向けイベント、Snapdragon Tech SummitでWoAこと、Windows on Armとも呼ばれるArmアーキテクチャのSoCで動作するWindows 10の正式なお披露目が行なわれました。

発売時期は明確には示されていないものの、ASUSとHPから発売予定となっている実機も実動デモされていて、Arm版Windows 10の登場が間近に迫っていることを実感させてくれています。

今回はこれらのデバイスとArm版Windows 10の特徴などに触れていきます。

実機は脅威的なバッテリー駆動時間が最大の武器

ASUSから登場予定のマシンもHPのマシンも、SoCには今のクアルコムのSoC、SnapdragonシリーズのハイエンドであるSnapdragon 835を搭載しています。

このチップは現行のスマートフォンの上位機種でも使われるものと一緒で、Armアーキテクチャの一般向けチップとしては最高の性能を持つものになっています。

ただ、同じイベントで次期最上位チップのSnapdragon 845も発表されていますので、しばらくするとハイエンドの名は譲ることになりますが。

Snapdragon 835は、ArmアーキテクチャのSoCのCPU部に共通のユニークな構成を取るチップになっています。

Webサイトの表示なと負荷の軽い処理を低消費電力で効率よくこなすためのローパワーのCPUコア4つと、ゲームなど処理の負荷が高い動作を担当する高性能なCPUコア4つを統合した8コア構成を取るチップです。

フルに処理性能を発揮すると消費電力はATOMやCore mシリーズと同レベルの消費電力・発熱になると思われますが、ArmアーキテクチャのSoCは低負荷時、アイドル時の消費電力が極めて低いのが特徴です。このあたりがスマートフォンのバッテリーの持ちを下支えしています。

その特徴がWoAデバイスでも活きてくることになります。

ASUS、HPのマシンとも動画再生を20時間以上行なえ、モダンスタンバイを利用すれば700時間に及ぶスタンバイを可能にする省電力性能があります。

ASUSの機種は、13.3型のフルHD液晶を備えたフリップ型の2in1 PC。

エントリー機はメインメモリ4GBと64GBのSSDを搭載して599ドル、上位機種は8GBのメモリと256GBのSSDで799ドルです。

特別薄くはありませんし今どきのモバイルPCとしては軽くもありませんが、LTEモデムを搭載しつつリーズナブルな価格が実現されています。

HPの機種は、Surface Proのようなタブレット寄りの2in1です。

ワコム方式のスタイラスペンが使えるタッチパネルを備えた、12.3型のフルHD液晶を採用しています。

こちらは年内の発売は無理なようで、2018年1月以降まで待つ必要があります。

OSにはどちらもWindows 10 Sを搭載します。

実用的な性能を実現

Arm版Windows 10はWindows 10のフル機能が使えるもので、まさにホンモノのWindows 10です。もちろんOS本体はArmネイティブな機械語で作成されていますので、OS本体はごく普通にサクサク動作します。

インテルCPU用に作成されたいわゆるWin32アプリケーションは、x86命令へのエミュレータを介する形で動作しますが、オフィスアプリケーションならば十分に実用的な性能が実現できているようです。

触ってみた人の印象では、ATOM以上Core i3以下ぐらいの体感速度だそうです。

Arm版WindowsではWin32アプリから呼び出されるライブラリ(DLLなど)は、恐らくほとんどの部分がArmネイティブコード化されています。

このためDLLの中のサブルーチンの動作はエミュレータを介さず速度低下がない状態で実行されます。

そのあたりが実用的な速度を実現できた最大の要因でしょう。

64bit Windowsで32bitアプリを動かすWoW64などの知見がフルに活かされているはずです。

PCの流れを変えるかもしれないデバイス

WoAデバイスの最大の特徴はバッテリー駆動時間の長さです。一般的なオフィスアプリの利用程度の使い方ならば、スマートフォン並の充電間隔で運用できるかもしれません。

また、SnapdragonがSoCですから当然LTE対応のモデムを内蔵していて、「いつでもネットに繋がるPC」が実現できます。

価格面でも少なくともASUSのマシンは同じSoCを搭載したスマートフォンと同レベルと言っていい価格になりました。

色々な意味でPCの流れに楔を打ち込む一台になるかもしれません。

ちなみに、WoA、Windows on Armと銘打たれていますが、実際には対象にしているSoCはSnapdragonのみ。ですので、クアルコムはWoAではなく「WoS」と呼ぶようです。