大規模マルチコアCPU、Core i9、Ryzen Threadripperの両者の強み・弱点

Intel CPU Core i9-7900X 3.3GHz 13.75Mキャッシュ 10コア/20スレッド LGA2066 BX80673I97900X 【BOX】

AMDのRyzen Threadripperが先行し、それを受けて立つ形でリリースされたインテルのCore i9シリーズはかなり大規模なマルチコアCPUで、従来のより一般的なマルチコアCPUとは性能面などで一線を画する仕上がりになっています。

このクラスのCPUの呼び方自体、業界が模索中のようで「メニーコア」の単語も使われ始めていますね。

著者的にはメニーコア、と言われてイメージするのは64コアクラスのXeon Phiあたりから。

AMDのサーバ向けCPU EPYCの最大構成32コアあたりが境界になるのではないか、と予測します。完全に余談ではありますが、この辺りの言葉遣いがどうなるかもちょっと面白そうではありますね。

さてのっけから少し脱線しましたが、日本のWebメディアにも16コア、18コアのCore-Xシリーズのサンプルが出回り始めて性能の詳細レポートが出始めています。

Ryzen Threadripperに関しては既に先行してさまざまな情報が出ています。

この辺りの情報からAMDとインテル、両者のCPUの特徴をザッとまとめ直してみようと思います。

CPUの絶対性能はCoreプロセッサに強み

Ryzenシリーズのコアあたり・クロックあたりの性能は、第6世代以降のCoreプロセッサにはわずかに及ばないことが分かっていましたが、大規模マルチコアCPU同士での性能比較でもそのことが改めて証明される形になっているようです。

純粋なCPU性能を見るのに適したベンチマークの一つCINEBENCHのシングルスレッド性能を見ると、1コアでの最大動作クロックの違いもありますが、Core i9シリーズとRyzen Threadripperの間には思いの外大きな性能差があります。

クロック差を考慮しても、5%以上のIPCの差がありそうです。

また、AVX命令の実装の違いにより、この命令を多用する処理ではCoreプロセッサが良い値を出します。

ただAVX命令に関する考え方は、AMDとインテルとで設計思想の根本的な違いになっています。AMDではAVX命令で行なうようなベクトル演算はGPUに任せようという発想になっています。

このためCPU側の構造をシンプルにまとめる方向で設計しています。

さまざまな効率はRyzenシリーズが優れる

インテルのCoreプロセッサは一言で言うと「増築」を繰り返してきた建物のようなものです。内部の構造がかなり複雑になっています。

これに対しRyzenシリーズは1から完全新設計で作り直したCPUですので、今必要な機能をとてもスマートに実装できています。

冗長な部分が少なく、同様の機能をより少ないトランジスタ数で実現できていて、コンパクトで電力効率の高いCPUコアが実現できています。

8コアのRyzen 7をコンパクトなダイサイズにまとめて比較的安価に提供できたのは、この部分がしっかりと活きた形です。

どちらも派生CPUは作りやすい(はず)

Coreプロセッサは、CPU内部の重要機能それぞれがかなりキレイにモジュール化されていて、設計段階での「コピペ」的な作業でどんどんコア数を増やしたり、組み合わせるiGPUを取り替えたりが出来ることが分かっています。

恐らくRyzenシリーズもそれに近い設計をとっていると思われます。

ただ、今のところRyzenシリーズはCPUのダイのバリエーションは極力抑え、1つのダイから多様な製品を作る方向をとっています。ここは半導体界の巨人、インテルの企業体力故の力業とは対象的な部分です。

恐らくこれから世に出てくるRyzenシリーズのメインストリームAPUに先手を打つような形で、コア数を増やした第8世代のCoreプロセッサを短期間で開発できたあたりに、インテルの底力を感じます。

第8世代のCoreプロセッサに10nm世代の新しいプロセッサを投入するか、14nm世代のリフレッシュ版を使うかは、Ryzenシリーズの実性能などをかなり詳細に分析して慎重に判断を行なった結果なのだろうと思います。

競争があるのは健全な市場の証

AMDがRyzenシリーズでPC向けCPUジャンルに放った久々のスマッシュヒットに対し、インテルが現行のCoreプロセッサの資源をうまく活用してこちらもかなり有効なカウンターを打った、それが今の状況でしょうか。

数年ぶりにPCのCPU性能を巡る状況に大きな動きが出ていますが、やはりこういったジャンルには競争がないとダメだ、という証明にもなった感じですね。

この動きを作り出したのは、間違いなくAMDのRyzenシリーズです。

AMDはCPUのマイクロアーキテクチャ改良は行なわず、同じアーキテクチャをしばらく使い続けますので、今後、インテルが打ったカウンターにさらにどう対応してくるのか、まだしばらく楽しい状況が続きそうです。