インテル第8世代Coreプロセッサを発表。そこから見える今のCPU事情
インテルがはやくも第8世代のCoreプロセッサを発表しました。
具体的な製品情報が先行したのはノートPC向けのUプロセッサ。続いてデスクトップ向けのSKUが公開されました。
どちらにも共通するのは既存モデルからのコア数増加です。
今回は第8世代のCoreプロセッサの情報から見える今のPC向けCPUの状況をまとめてみます。
マイクロアーキテクチャは第6世代から据え置き
今回発表された第8世代のCoreプロセッサは世代数こそ進んでいますが、マイクロアーキテクチャ自体は第6世代から据え置きのままです。
製造プロセスのルールも14nmのままでこちらも世代が進んではいませんが、性能面、電力効率面の熟成が進み、その基盤もあって一般向けCPUでのコア数の増加に結びついたのでしょう。
今の一般的なノートPC向けとなるUプロセッサはTDP枠が15W。その中でクアッドコアCPUを実現してきていますし、デスクトップ向けでは65WのTDPで6コア12スレッド対応を実現したモデルも存在します。
ノートPC向けもデスクトップ向けもコア数が増えた分、定格の動作クロックは下がっているのですが、ターボブースト時の最大クロックはむしろ高くなっているのがこの世代の特徴です。
全コア動作時の消費電力増加は定格クロックを下げることで相殺し、プロセス改善による動作クロックの向上が最大動作クロックの向上に結びついています。
マルチスレッド対応のプログラムが動作する環境では、確実な性能アップが期待できるCPUになっています。
超高度化したCPU故の製品展開
実はインテルは10nmでの次世代のCoreプロセッサの準備も行なっていて、かなり製品化に近いところまで来ているとの情報があります。
ですが、第8世代は14nmプロセスのまま製品を展開してきました。
これは製造プロセスを進めることによる製造コストアップを何で埋め合わせるか、その商業上の難しさの方が高くなっていることの表れかもしれません。
製造プロセスを進めても動作クロックが大幅に向上することは難しくなっていて、性能向上を狙うにはコア数を増やしてマルチスレッド性能を稼ぐしかなくなりつつあります。
ですが一般ユーザーのパソコンの使い方では、マルチスレッド性能が問題になるケースはかなり割合が少なめです。
コア数を増やさず回路規模を保ったままなら製造プロセスを微細化することでCPUのサイズを小さく出来ますが、その分のコスト削減はある程度製造難易度の高度化によるコストアップで打ち消されてしまいます。
なので、新しい製造プロセスを導入するきっかけが掴みにくくなっている、そういう事情があると思われます。
インテルのアーキテクトはRyzenを見てほっとしたのかも?
自作PC市場ではAMDの新アーキテクチャのCPU、Ryzenシリーズが好評を博しています。
インテルにとっても脅威の製品だとは思いますが、実はインテルのCPU設計を行なうアーキテクトは内容、実性能を見てほっとしたのかもしれません。
Ryzenシリーズは確かに新設計によって回路規模を小さくシンプルにまとめ電力効率面でも優れていますが、肝心のクロックあたりの性能を表すIPCは第6世代のCoreプロセッサには及ばなかったからです。
事前のCPUのマイクロアーキテクチャの情報からある程度想像できていたと思われますが、RyzenシリーズはだいたいインテルCPUでいくと第5世代のCoreプロセッサと同等のクロックあたり性能になります。
加えて、AMDのCPUは一度、新アーキテクチャを導入するとそれをかなり長いスパンで使い続けます。
ですので、Ryzenが最新のCoreプロセッサのIPCを超えられなかったことで、インテルは第6世代のCoreプロセッサのマイクロアーキテクチャを延命させ、製造プロセスの改善などでRyzen対策を行なう方向に舵を切ったのではないか、と。
インテルの技術陣は、製造プロセスの改善による性能のプラスαと電力効率の向上にも自信があったのでしょう。
RyzenのIPCがもっと第6世代のCoreプロセッサに肉薄していたら、事情はまた異なる形に動いていたかもしれません。
裏事情は著者の推測に過ぎませんが、とりあえず第8世代のCoreプロセッサの登場により、スタンダードなPCのマルチコア化はまた1歩進むことだけは間違いなさそうです。
Ultrabookクラスの薄型ノートPCも遂に4コアCPUが当たり前の時代になる訳ですね。