NVIDIAの「MAX-Q」がゲーミングノートPCに革命をもたらす?

NVIDIAのMAX-Qの情報ページ

 

パソコン用外部GPUやAI分野のディープラーニング向けプロセッサの最大手であるNVIDIAが、ゲーム用ノートパソコンに革命をもたらすかもしれない設計技術「MAX-Q」を発表しました。

パソコンの売れ行きが鈍化して久しいですが、そんな中でもゲーム用パソコンには大きなニーズがあり、市場自体も拡大を続けています。

その流れはノートパソコンにも及んでいて、ノートパソコンの形ながら高い3D描画性能などを実現したゲーミングノートパソコンが人気を博しています。

ですそのタイプのPCは高性能な分、発熱はどうしても大きくなり、そのための冷却機構にも高い能力が求められるようになった結果、今のゲーム用ノートパソコンは大きく、厚く、そして熱いパソコンでもあります。

さらに重いゲームを動かすと空冷用ファンがフル回転して騒音もかなり大きくなってしまう弱点があります。

MAX-Qはこういったゲーム用ノートパソコンを一気に変えることが出来るかもしれない技術です。

GPUなどのパソコン用チップの特性が出発点

パソコン用のCPUもGPUも、動かすための電源の電圧を高めるとより高いクロックで動作出来るようになります。

今のCPUはほとんど全ての機種が動作中にOSなどの負荷を見て動的に動作クロックを変える仕組みになっていますが、それと同時に動かすための電源電圧も調整しています。

負荷が低いときには動作周波数と同時に電圧も下げて、消費電力をより減らすように動作します。

パワーを上げる方にもこれと同等の理屈が働き、電源電圧が高いほどより高いクロックで動けるようになる訳です。その分、消費電力と発熱が大きく増加します。

NVIDIAではGPUを動かす際の電源電圧を上げていっても、あるラインから上では動作クロックを上げにくくなるポイントがあることに着目しました。

MAX-Qではこのチップの特性を活用します。

GPUをフルパワーでは動かさない

外から見たイメージでは、MAX-Qに則った設計で作られたPCのGPUの動作は見出しの通りになります。

搭載しているGPUをフルパワーで動かすと、電力の面でも発熱の面でも効率はむしろ下がる、というところがミソです。

色々な観点から、ほどほどのクロック、電源電圧での動作に留めることで、イメージ的にはGPUがフルパワー動作するときの9割ぐらいのパワーを発揮させつつ、ある程度発熱や消費電力を抑制しよう、という発想がMAX-Qの基本的な考え方です。

本来GPUが持っている能力を使い切らないことになりますので、そちらの観点ではもったいない、あるいは贅沢なパーツの使い方とも言えますね。

それでもNVIDIAのGeForce GTX 1060を載せてフルパワーでブン回すタイプのゲーム用ノートPCと比べ、MAX-Qの設計を持ち込んたGeForce GTX 1080を搭載した機種では、70%高い性能を発揮出来るとしています。

各メーカーから薄型ゲーム用ノートPC続々登場へ

この設計思想をNVIDIAが提示したおかげで、従来では考えられなかった薄く静かなゲーム用ノートパソコンが世に出ることになりました。

ASUSのZEPHYRUSはGeForce GTX 1080を搭載しながら、最大の厚さはわずか17.9mm。フル稼働時でも騒音は39dbを実現しました。

MSIのGS63もGeForce GTX 1070を搭載しつつ18mmの薄さを実現と、今までのゲーム用ノートパソコンとしては考えられない薄さが実現できています。

MAX-Qの考え方はゲーム用ノートパソコンだけではなく、より一般的な薄型ノートパソコンに独立GPUを搭載するためにも使えるはずです。

従来、排熱が厳しいために独立GPUの搭載を見送ってきたモバイルワークステーション寄りの薄型ノートパソコンにも、GPUを積める可能性が出てきたかもしれません。

ゲーム用ノートパソコンだけではなく、そちらの動向もチェックしていくと面白いかもしれませんね。