Core i9登場へ。Ryzenシリーズ対抗でインテルも本気モードか
自作パソコン市場ではメーカー製パソコンに先行する形で、AMDの新CPU、Ryzenシリーズが好調です。8コア/16スレッド対応の高性能CPUを比較的小さめのTDP、発熱で実現し、コストパフォーマンスにも優れているからです。
さらに夏頃にはこのシリーズで16コア/32スレッド対応のCPUのリリースもアナウアンスされています。
そういった状況をインテルも手をこまねいてみていた訳ではありませんでした。あるいは、お尻に火が付くとまでは行かないでしょうが、危機感を持ったというのは間違いはなさそうです。
COMPUTEX TAIPEI会場で、従来のウルトラハイエンドCPUシリーズを超える、Core i9ブランドのCPUの投入を発表しました。
最上位機種はなんと18コア/36スレッド対応です。
アーキテクチャはSkylakeベース
今回発表されたCPU群は、より一般向けのCoreプロセッサとは異なるエクストリームラインと呼んでいいレベルの超高性能CPUでGPUを統合しておらず、自出的にはサーバ向けCPUであるXeonそのものと言っていい中身のチップになります。
今このラインで販売されているシリーズが前々世代のマイクロアーキテクチャ(Broadwell)をベースにしているのに対し、新シリーズではSkylakeベースのものに切り替わることになります。
1世代前の第6世代のCoreプロセッサベースのものにはなりますが、現行の第7世代のCoreプロセッサはマイクロアーキテクチャ自体は第6世代のものと完全に一緒ですので、エクストリームラインのCPUとしてはもしかしたら初めてマイクロアーキテクチャが一般向けCPUに追いつく形になったかもしれません。
従来のロードマップでは12コアまでの予定だった
既存のロードマップではこのタイミングの発表では、12コアCPUまでが投入される予定でした。ですが直前で予定が変更になったようで、PCメーカーなどにも情報が伝えられないままの、本当に急な発表だったようです。
実際、上位のCPUに関してはTDPも動作クロックも明記されないままの発表で、発表自体も非常に後付け感満点のものになっています。
これも全てはAMDのRyzenシリーズの出来が良かったから、ということの影響に他ならないと言えるでしょう。かつてのPentium4 VS Athlon 64あたりの構図がインテル首脳陣の頭をよぎったのではないでしょうか。
飛び込みでもSKUを追加できるインテルの強み
このラインのCPUの中身はほぼサーバー向けCPUであるXeonそのものです。そして新しいXeonでは32コアCPUまでのリリースが予定されていて、恐らく2コア単位で非常に多くの種類のコア数のバリエーションが予定されているはずです。
このXeonの18コアまでのCPUを一般PC向けにも振り分けることにしたのが、今回のCore i9シリーズのCPUの正体です。
コンピュータ的にはより切りのいい数字に見える16コアまでに留めず、18コア製品を用意したところにインテルのしたたかさも感じます。
AMDではRyzenシリーズのCPUコア設計を今のところ1つしか持っていません。16コアCPUやサーバ向け32コアCPUが予定されていますが、どちらもRyzen 7と同等の8コアCPUをPentium Dのように接合することで多コアCPUにする方法が取られると思われています。
このためAMDが16コアより上のCPUを作ろうと思うと、次は24コアCPUになってしまうはずなのです。
また、Ryzenシリーズの上位CPUでは、内包している8コアのRyzen相当のCPUの持つ外部インタフェースを全てそのまま引き出すような実装を考えているようです。
そのおかげで多くのメモリチャンネルやPCI-Eのレーン数を持てる訳ですが、その代わりにコア数を変えたCPUを作るとソケットと対応チップセットも変わってしまう形になるようです。
インテルはこのあたりの間隙を突いてきた感じですね。
Skylakeから拡張された機能も
今回発表された新CPUはキャッシュメモリの構造ががらりと変わり、2次キャッシュが増量、3次キャッシュが容量を減らす代わりに、2次キャッシュと3次キャッシュに同じ内容のデータを持たない方式が採用されました。
これにより、実質的なキャッシュメモリのサイズはわずかに増加する形になっています。
また、強力なベクトル演算命令のAVXが512ビット長に拡張されています。
18コアCPUなんて99.99%ぐらいのユーザーが使い切ることはほぼ不可能で、ごくごく1部の用途でしか真の実力を発揮できません。
それでもインテルがこんなウルトラハイエンドCPUを投入したのは、それでだけAMDのRyzenシリーズを意識していることの表れでしょう。
やはりこのような製品でも、ライバルがいないと市場は面白くなりませんね。今後もAMDもインテルにも頑張ってもらいたいところです。