ZENでインテルの高性能CPUに追いつけるか?徐々に出始めた情報
AMDは高性能CPUでは完全にインテルに置いていかれていました。
インテルがPentium4で躓いていた時期には高性能パソコンや、特にサーバーのジャンルでインテルのシェアをかなり奪う形になっていました。
ですが今ではパソコン向け、サーバ向けCPUでは完全に劣勢です。
それを今、開発真っ最中の「ZEN」アーキテクチャの新CPUで一気に盛り返そうとしています。今回は少しずつ姿の見えてきたAMDの新CPUアーキテクチャZENを取り上げます。
方針の転換
まずZENアーキテクチャの基本にあるのは、CPUの設計方針の方向転換です。
今のAMDのパソコン向けCPUは、クロック当たり性能をあまり重要視しない作りでした。その作り方によってCPUをシンプルにして、ある程度はクロックを上げることで性能のカバーを行なうような方向でした。
ですがそういった作りでは、高性能化し続けたインテルのCoreプロセッサには単純なCPU性能では全く太刀打ちが出来なくなっていました。
そこでAMDは方針を大転換。インテルのCoreプロセッサや、かつてのAMDのCPUが採用していたような、クロック当たりの性能を高める方向性への復帰を果たすことにしたのです。
アーキテクチャはざっくり第5世代のCoreプロセッサぐらい?
ZENアーキテクチャは少しずつ内容が公表され始めていますが、内容は思い切りざっくりとまとめると、概ね第5世代のCoreプロセッサぐらいの作りになりそうなイメージです。
第6世代や第7世代のCoreプロセッサほどの大胆な設計ではなさそうです。
また、AVXと言うCPUで複数のデータを一気に計算する命令の実装が、インテルよりも劣ります。今のインテルのCPUでは合計256bitのデータを一気に計算できる仕組みですが、AMDは1度に実行できるデータを128bitに抑えています。
この命令を使う際には、ZENアーキテクチャのCPUはCoreプロセッサの半分の性能と言うことになります。
ですが、このような演算を行なう処理はごくわずかで、実性能で大きな差が出る可能性があるのは動画のエンコードなどの一部の処理に留まるはずです。
また、ZENアーキテクチャは完全にゼロから構成し直したCPUです。これに対してインテルのCoreプロセッサは、元をたどるとPentium3あたりのアーキテクチャから拡張を続けてきたものになっています。
この部分ではZENアーキテクチャに大きなアドバンテージがあります。
増築を重ねて内部が迷路のようになった複雑な建物と新築の建物の違いみたいなものですね。使い勝手、利用上の効率が大きく異なる可能性が高いのです。
実際にCPUでは、完全に0から作り上げたCPUのアーキテクチャは性能面でも、最大数十%近いアドバンテージがあるとの説もあります。
また、完全新規のCPUアーキテクチャでは回路規模も抑えることが可能で、同じ性能、機能のCPUをより小さく作り込むことが出来るようになります。
ZENではその部分を製品としてのアドバンテージに活かせるかどうかが鍵になる可能性が高そうです。
AMDは伝統的にこちらの、ある一定の間隔でCPUのアーキテクチャを完全に刷新する路線を取っています。
最初の製品は8コアで3.4GHz動作?
ZENアーキテクチャのCPUは統合GPUを持たない、ハイエンドのCPUから市場に投入される予定です。
ハイパースレッディング相当の機能を搭載して、8コア16スレッド対応の高性能CPUがまず世に出る予定です。
動作クロックは定格3.4GHz以上とされていて、TDP 95Wの枠でインテルのCoreプロセッサのエクストリームシリーズのラインと戦える性能を持つとAMDでは考えているようです。
実際にそこまでの性能が出るようになると、インテルもうかうかしてはいられなくなりそうです。
実際、AMDでは32コア64スレッド対応のサーバー向けモンスターCPUの出荷を予告しています。
現在インテルのサーバー向けのCPU、Xeonシリーズのハイエンドが24コア48スレッド対応製品です。今のところインテルにはこれ以上のコア数のCPUを作れるCPU設計を持っていません。
ZENアーキテクチャのCPUの登場で、またCPUの競争が生まれるかもしれません。