一般化し始めたNVMe対応SSD
パソコンなどのハードディスクの代わりの超高速なストレージとして利用されているSSDですが、最近はより性能の高い「NVMe」という仕組みを採用する製品が増えてきました。
この仕組みを採用することで、SSDは従来のSATA3接続のものよりもずっと高い性能を実現できるようになっています。
今回はかなり製品が増えてきたNVMe対応のSSDを説明します。
NVMeとはなんぞや?
NVMeは「Non-Volatile Memory Express」の頭文字を取った言葉です。
Non-Volatile Memory、つまり「不揮発性メモリ」をつかったストレージとパソコンを接続するためのインタフェースの規格のことです。
今一般的に使われている不揮発性メモリは「フラッシュメモリ」と言われるタイプのものです。パソコン用のSSDやSDカード、スマートフォンの内蔵ストレージなど、非常に幅広い分野で使われています。
「不揮発性」と名前につくとおり、一度データを書き込むと基本的に電源を切っても、書き込んだデータの内容が消えずにずっと残ります。
このため、ハードディスクなどと同じような、データを保存しておくための機器に便利に利用できるようになっているのです。
今使われているフラッシュメモリの読み書きのスピードは、パソコンなどのメインメモリで使われるDRAMよりはかなり遅いものですが、それでも機械部品の存在するハードディスクなどよりははるかに速いデータの書き込み/読み出しが可能です。
特に、小さなデータがバラバラの場所にあるときの読み出し(≒ランダムアクセス)の性能が、ハードディスクとは比べものにならないほど速く、パソコンのSSDではOSの起動速度やアプリの使用感などが大きく向上するようになりました。
なぜNVMe?
今までのSSDは、ハードディスクのために作られたインタフェースの規格を使ってパソコンと接続していました。「SATA3」などと言われる規格ですね。
この仕組みは内部的には、色々な動作の反応速度がそれほど速くないハードディスクに合わせて作られています。このため、各種反応速度が桁違いに速いフラッシュメモリなどでは、インタフェースの規格側がボトルネックになってしまって、本来の性能を全く出し切れない状況になっていました。
その部分を打ち破って、フラッシュメモリなど不揮発性メモリを使ったストレージ本来の性能を引き出すために作られたのがNVMeということになります。
実際、NVMe対応のパソコン用SSDでは、SATA3のインタフェースの限界の5倍近い転送速度を叩き出す高性能SSDも登場しています。
パソコン側の対応も進み普及へ
Windowsでは、Windows 8.1からOS標準でNVMeのSSDに対応するドライバーが組み込まれるようになりました。
また、第6世代のCoreプロセッサ対応のマザーボードあたりから、「M.2」と呼ばれる小型のSSD専用のスロットが設置されるようになり、そこにNMVe対応SSDの性能をフルに引き出せるだけのインタフェースが設けられるケースが増えてきました。
このような条件が上手くタイミングを合わせるように整ったおかげもあって、NVMe対応SSDが一気に世に出るようになったようです。
SSDではメジャーなメーカーのサムスンやインテルも対応製品を複数出すことで、メーカー間の競争も盛り上がりを見せつつあります。
SATA3対応のSSDと同じようにNMVe対応SSDでも、高性能で高価な製品とそこそこの性能で安価な製品の2極化が始まったのも、本格的普及の証と言えそうです。
NVMe本来の性能はパソコンでは引き出せない
ただ、NVMe対応のSSDの超がつくレベルの高性能が本当に求められていたのは、多数のアクセスがいっぺんに集まるようなサーバーのジャンルです。
通常の利用の範囲の中で、パソコンではその性能をフルに発揮させることはまず不可能です。ベンチマークソフトを動かすとき以外は。
実際にパソコンを一人で利用している範囲では、SATA3対応SSDとNVMe対応SSDを使ったパソコン間で、使用感の違いを感じることはないでしょう。
ただ、パソコンを自作するユーザーにとっては、SATA3の口をふさぐことなく超高速のSSDをコンパクトに利用可能な部分には大きなメリットと魅力があると思います。
不揮発性メモリもフラッシュメモリよりも高速な仕組みが研究開発中で、今後はNMVeの仕組みがもっと活用されていくことになると思います。