パソコン用メモリの新時代?HBM登場

今年、ビデオカードのメモリとして全く新しいタイプのメモリがデビューしました。

ビデオカードの最も重要なパーツのGPUのRADEONシリーズを持つAMDが、鳴り物入りで登場させたRADEON Furyシリーズが採用した、「HBM」と呼ばれるメモリです。

もう10年以上前からパソコンに限らずコンピュータの世界では、高性能になりすぎたCPUとメモリの速度の差に悩み続けてきました。これをある程度緩和できる可能性を秘めているメモリが、このHBMです。

・従来のメモリとは発想が全く別

HBMはHigh Bandwidth Memoryの頭文字を取ったもので、直訳すると、広帯域メモリ、となってしまって、まるで一般名詞みたいな訳になります。

今までのメモリとは発想の転換を図って、データの転送速度を一気に引き上げようとする規格です。

今まで使われてきたメモリ(RAM)は、LSIの良くある黒いゲジゲジみたいなパッケージの形で製品にするために、信号を伝えるために使えるピンの数がどうしても制限されていました。

このため、メモリとCPUの間のデータの転送速度を上げるためには、基本的には動作クロックを上げるしか方法がありませんでした。

このためメモリの消費電力も上がり、転送速度もそろそろ限界を迎えつつあった、という閉塞状況がありました。

HBMではこの部分の発想を全く変え、メモリのパソコンへの搭載方法から変えてしまって、一気に信号のやりとりに使うピンの数を増やし、同時に大量のデータをやりとりできるようにしてしまおう、という発想で作られています。

従来のハイエンドのビデオカードでもバス幅は512bitぐらいが上限でしたが、HBMではなんとこれが一気に8倍になります。つまり、4096bitになります。

このため、メモリなどを無理に高速のクロックで動作させる必要がなくなり、消費電力を大幅に減らすことも出来るようになりました。

・実装方法が特殊でコストは高め

この、たくさんの信号をやりとりするピンを実現するために、HBMではかなり特殊な実装方法を使います。最終的には、CPUやGPUの上にメモリチップを重ねて、それぞれのシリコンの基板を貫通する形の「杭」を通して線をつなぎます。

この方法がまだ確立されきっていないため、恐らくかなりコストがかさんで、きちんと製品化できるチップの数も制限されているのだと思われます。

まず最初にHBMを採用したRADEON Furyシリーズのビデオカードが非常に高価で、市場に出回る数がとても少ないのも、この部分の影響をモロに受けているのだと思われます。

・HBMの本番は来年以降

今年使われているHBMはHBMのバージョン1、HBM1と呼ばれるもので、実はまだ、従来のメモリを突き放すような性能は出せていません。

2016年登場予定のバージョン2、HBM2になると、今のHBM1の倍の転送速度が実現できるようになって、ようやく従来型のメモリを圧倒できるようになります。

そういった状態でもAMDが先行してHBM1を搭載したビデオカードを出してきたのは、RADEON FuryシリーズでHBMの使い方に慣れておこう、という意図があったのかもしれません。

2016年にはAMDのライバル、NVIDIAもHBM2を搭載したビデオカードを投入する予定になっています。

この技術が確立されれば、将来的にはビデオカードだけではなく、CPUにもこのメモリが搭載されるようになり、コンピュータの実性能がまた一歩前進することになるかもしれません。